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中小企業のAI活用|「様子見」で終わらないための判断条件

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中小企業がAIをやるかどうかは、いま人の手で繰り返している作業を1つ渡せるかどうかで決まります。中小企業のAI活用を解説する記事は多く、導入率の数字も検索すればすぐに出てきます。難しいのはその先です。その数字が自社にも当てはまるのか、そして、やらないと言ってよいのか。

現在地だけ先に書いておきます。調査に回答した中小企業のうち、AIを導入しているのは20.4%です。別の調査で生成AIに絞ると、中小企業の32.4%が活用していると答えました。調査によって2割から3割強まで幅がありますが、どの数字で見ても、まだ多数派ではありません。

最後まで読むと、自社がAIをやるべきか、それとも今は先送りでよいかを、自分の言葉で説明できるようになります。やると決めた場合は候補になる作業の選び方が、先送りと決めた場合はいつ見直せばよいかが分かります。

要点

この記事の要点

  • 周りが始めていることは、自社の判断材料にならない
  • AIを導入した中小企業は20.4%。生成AIの活用でも中小32.4%
  • 専任の部署がない中小企業は88.0%。体制はやらない理由にならない
  • 分かれ目は、渡せる作業が1つあるかと、結果を確認できる人がいるか
  • 今はやらないも判断。見直す時期を決めて初めて成立する

周りが動いていることは、判断材料になるか

結論、なりません。他社が始めたことは、自社がAIをやるべきかどうかの判断材料になりません。同じ業種でも、会社ごとに条件が違うからです。

同業がAIを入れたと聞くと、遅れているように感じます。ただ、扱う商品も人の数も、どこに手作業が残っているかも会社ごとに違います。取引先や金融機関から聞かれるのも、多くは相手が自分の関心で状況を確かめているだけです。設備投資の判断と同じで、世の中の投資が活発だからといって、自社が今その設備を入れるべきかは別の話になります。判断に使えるのは、自社の中にある事実だけです。

とはいえ、聞かれた以上は何か答えなければなりません。そこで必要になるのが順番です。外の話をいったん脇に置いて、数字で現在地を確かめ、そこから自社に当てはめて考えられるように解説します。

中小企業のAI利用は、いまどれくらいか

調査によって2割から3割強まで幅があります。どの調査で見ても、まだ多数派ではありません。

数字が割れるのは、測っているものが調査ごとに違うからです。何を誰に聞いた数字なのかまで見ておくと、自社に当てはめるときに間違えません。

3つの調査によるAI導入率

調査

測っていること

対象と母数

割合

中小企業基盤整備機構 2026年3月公表

AIを導入しているか

回答した中小企業1,647社

20.4%

帝国データバンク 2026年3月調査

生成AIを活用しているか

全国の企業10,312社

34.5%

ラグザス 2026年4月調査

勤務先がAIを導入しているか

個人3,000人に調査。うち従業員300人以下の会社に勤める人の回答。人数は未公表

23.7%

※ 帝国データバンクの34.5%は生成AIの活用を測った数字で、社員が個人でチャット型のAIを使っている状態も含まれます。会社としての導入との違いは会社としてのAI導入と、社員が個人で使うことの違いで説明しています。※ ラグザスは企業ではなく個人3,000人への調査で、規模別の回答者数は公表されていません。大企業との差を見るための補助として扱います。

3つに共通しているのは、どの測り方でも半分に届いていないことです。周りは始めているという肌感は間違いではありません。ただ、始めていない側のほうがまだ多いのが現状になります。

中小機構の調査をもう少し細かく見ると、内訳はこうなります。

  • 全社的に導入している:3.6%
  • 一部の業務で導入している:16.8%
  • 導入を予定・検討中:18.6%
  • 導入予定はない:61.0%

母数は1,647社です。回答した企業は資本金5,000万円以下が93.4%を占めます。この記事を読んでいる方と同じ規模帯の会社が答えた数字だということです。

規模と業種で見ると、どう違うか

規模が小さいほど割合は下がります。ただ、うちには関係ないと言えるほどの断絶にはなっていません

帝国データバンクの調査で、生成AIを活用していると答えた企業の割合を規模別に見ると、こう分かれます。全体の母数は10,312社です。

  • 大企業:46.5%
  • 中小企業:32.4%
  • 小規模企業:28.0%

大企業と小規模企業では、18.5ポイントの差があります。差はありますが、小規模企業でも3割近くが使っていることになります。個人3,000人に聞いたラグザスの調査でも大企業64.7%に対して中小企業23.7%で、大きい会社ほど進んでいる傾向は共通しています。

※ ポイントは割合どうしの差を表す単位です。46.5%と28.0%の差が18.5ポイントにあたります。

次に業種です。中小機構の調査では、AIの導入率が業種によってはっきり分かれました。回答企業の多い7業種を抜き出します。全12業種のうち、学術研究36.9%、教育31.6%、その他20.3%、生活関連18.7%、不動産18.3%は省略しています。

業種別のAI導入率(回答企業の多い7業種)

業種

AIを導入している割合

回答した企業数

情報通信業

54.6%

33社

小売業

19.4%

257社

宿泊業、飲食サービス業

18.0%

167社

卸売業

16.8%

119社

製造業

16.4%

196社

建設業

15.9%

246社

運輸業、郵便業

9.7%

31社

情報通信業を除けば、ここに挙げた業種はどれも2割前後で並んでいます。自社の業界がまだ動いていないように見えるのは実際にそのとおりで、業種を理由に判断を変える材料にはなりません。なお情報通信業と運輸業、郵便業は回答した企業数が30社台と少なく、この2つだけを取り出して比べる読み方はできません。

この分布は、業種ごとの向き不向きを示したものでもありません。今の時点でどれだけ入っているかであって、入れて成果が出るかどうかは別の問題です。つまり、業種の数字を見ても自社の判断は決まりません。規模でも業種でも決まらないとすると、次に出てくるのは体制の話になります。

専任がいない会社でも成立するか

成立します。専任の担当者も部署も置いていない会社でAIは動いています。むしろ置いていない側が9割近くを占めていて、そちらが標準です。

専任部署や専任担当者がいなくても、作業担当者が結果を確認する役を兼ねればAI活用が回ることを、思い込みと実態の対比で示した図

同じ中小機構の調査で、AIを推進しているのは誰かを聞いた結果です。

  • 推進する部署が決まっていない:88.0%
  • 推進する担当者が決まっていない:85.9%

※ 部署と担当者は別々の設問で、回答はそれぞれ1,605社と1,568社。専任を置いているのは、部署で2.3%、担当者で3.0%です。

詳しい人か専任の担当を用意してから始めるという条件を自分に課すと、中小企業のほとんどは始められないことになります。

もう1つ、2つの設問を並べると見えることがあります。AIを導入している会社は20.4%あるのに、推進する部署がある会社は12.0%しかありません。部署を決めないまま導入した会社が、それなりにあるということです。

※ これは調査にそう書かれている数字ではなく、2つの設問の結果を並べたときに分かることです。

ただし、誰も手を動かさないまま契約だけが進むと、使われないまま費用が続きます。必要なのは部署をつくることではありません。対象にする作業を毎日やっている人に、出てきた結果を確認する役を持ってもらう。これが決まっていれば、専任がいなくても回ります。

やる・やらないを分けるのは何か

分かれ目は2つです。渡せる作業が1つあるか。そして、出てきた結果を確認して止められる人がいるか

渡せる作業が1つあるかと、結果を確認して止められる人がいるかの2つの問いから、やるか今はやらないかへ分岐する判断フロー図

規模でも業種でも体制でもないと分かったあとに残るのは、自社の仕事の中身だけになります。実際、AIを導入した企業と検討中の企業に導入の目的を聞くと、業務効率化や作業時間の短縮が87.0%を占めました。母数は331社で、AIを導入済みか検討中の企業に限った集計です。使われ方は、今ある作業を軽くするところにほぼ集中しています。

だから、判断の軸も作業の側から立てられます。見るのは次の2つ。どちらも、事実で答えが出ます。

  • 毎月同じ形で繰り返していて、月に何回、1回あたり何分かかっているかを答えられる作業が1つでもあるか
  • その作業の結果を見て、おかしいと気づける人が社内にいるか

どちらにも答えられるなら、やると決めて構いません。逆に、時間を答えられる作業が挙がらないうちは、どのAIを比べても選べません。効果を測る基準がないので、試したあとに続けるか止めるかも判断できないからです。

2つ目は、専任の担当者を用意しろという意味ではありません。判断を伴う部分までAIに任せると、間違いに気づく人がいなくなり、手戻りのほうが増えます。確認する人を1人決めておけば足ります。どういう作業が渡しやすいかは、AIに任せやすい業務の考え方でも説明しています。

「今はやらない」と決めてよい場合

2つの問いのどちらにも答えられないなら、今はやらないと決めて構いません。ただし、いつ見直すかを決めて、初めてそれは判断になります

先送りは例外的な結論ではありません。中小機構の調査では、導入予定はないと答えた中小企業が61.0%を占めています。母数は1,647社です。

順番の問題であることもあります。同じ調査で、ITツールをすでに使っている企業の中で見ると、業務に残る手作業の割合が高いほどAIの導入率が低くなっていました。仕事のほとんどが手作業という会社では26.7%、大部分がIT化されている会社では56.8%。2倍以上の開きがあります。

※ 回答はそれぞれ183社と44社。この調査は原因までは調べていないため、手作業を減らしたからAIが入った、とは言えません。

紙で届いた情報を手で打ち直す工程が残ったままAIを入れても、その工程はそのまま残ります。この場合、先に減らすべきなのは打ち直しのほうです。CREARIも、AIではなく通常の自動化で足りると判断した場合は、そうお伝えしています。

先送りが判断になるかどうかは、次を決めているかで変わります。

先送りが判断になるための3条件

  • 見直す時期を決めているか(例:半年後の期初)
  • 前倒しで見直す条件を決めているか(人が抜ける、取引先からデータでのやり取りを求められる、手順が回らなくなる など)
  • 決めたことを社員に伝えたか

この3つがないものは、判断ではなく保留です。保留のままだと、次に聞かれたときにまた同じところから考えることになります。

どちらに決めた場合でも、AIに任せられる範囲がどこまでなのかは、先に見ておくと判断が固まります。

AI導入支援の進め方

実際に何をどこまで任せられるのかをまとめています。相談の前に、支援の範囲だけ見ておきたい場合はこちらから確認できます。

AI導入支援の進め方を見る

決めたことを、社員と取引先にどう言うか

どちらの結論でも、言い方の形は同じです。結論、理由、次にやることの3つでできています。

やると決めた場合は、こういう1文になります。

うちは、まず月次の請求書作成をAIで試します。毎月40件を手入力していて、時間が測れる作業だからです。3か月やって、時間が半分にならなければ止めます。

先送りと決めた場合も、形は変わりません。

うちは今はやりません。時間を測れる繰り返しの作業が、まだ切り出せていないからです。半年後にもう一度見て、その前に人が抜けたらすぐ考え直します。

どちらも、理由が自社の状態で書かれています。ここが効きます。「様子を見ている」「うちはまだ早い」だと、次に聞かれたときにまた同じ答えを探すことになります。自社の作業を理由にしておけば、聞かれるたびに同じ説明ができます

決めたあと、最初にやること

やると決めたなら、候補になる作業を1つ書き出すところまでです。先送りと決めたなら、見直す時期を決めて社員に伝えるところまでで足ります。

書き出す項目は4つです。

候補になる作業を書き出す4項目

  • 作業の名前
  • 月に何回発生して、1回あたり何分かかっているか
  • 紙で受け取っている情報、手で入力している情報がどこにあるか
  • 出てきた結果を確認できる人は誰か

2つ目が埋まらなかった作業は、まだ候補になりません。時間が分からない作業を選ぶと、試したあとに良し悪しを判断できないからです。

まとめ|決めているのは規模ではなく、渡せる作業があるかどうか

中小企業でAIをやるかどうかを決めているのは、会社の規模でも、専任の担当がいるかどうかでもありません。生成AIの活用率は小規模企業でも28.0%あり、専任の部署を置いていない企業は88.0%です。規模も体制も、やらない理由としては成立しなくなっています。

残るのは、渡せる作業が1つあるかと、結果を確認して止められる人がいるかの2つです。どちらにも答えられないなら、見直す時期を決めたうえで、今はやらないと決めて構いません。

そのうえで、記事を読んでも残る部分があります。書き出した作業が本当にAIに渡せるものなのか、それとも普通の自動化で足りるのか。ここは作業の中身を見ないと判定できません。

先送りと決めた場合は、ここまでで足ります。見直す時期と引き金を決めて、社員に伝える。そのときに備えて、会社としてAIを入れるとは何をすることなのかだけ先に確かめておくと、次が早く進みます。見直すときに確かめる、AI導入と呼ぶ範囲がその内容です。

やると決めて、書き出した作業がAIに渡せるものか判断できない場合は、そこから相談できます。CREARIは年間40社以上のAI導入を支援していますが、そのうち半数以上は、対象にする業務が決まっていない段階からの相談です。相談に来る方とこの記事を読んでいる方が同じとは限りませんが、決まっていない状態で相談するのは例外ではありません。AIではなく通常の自動化で足りる場合は、その旨をお伝えしています。

初回の相談で一緒に決めるのは、次の3つです。

  • 挙げた作業の今の手順と、そこに残っている手入力
  • AIに渡せる部分と、人が確認する部分の切り分け
  • 試す期間と、止めどき

相談と見積もりは無料で、最短1営業日で返信しています。問い合わせフォームには「ご予算感」の欄があるため、概算の枠だけでも決めておくとやり取りが早く進みます。

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参考にした調査

本文中の割合は、図表ごとに集計対象が異なります。全回答者を対象とする設問、ITツールをすでに導入している企業だけを対象とする設問、AIを導入済みか検討中の企業だけを対象とする設問があるため、該当する箇所に対象を書き添えました。