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中小企業のAI活用|始めるか見送るかを決める判断基準

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AIを使う会社が増えてくると、自社もそろそろ始めたほうがいいのかと気になります。同業他社が導入した、取引先からAI活用について聞かれた、といったことがきっかけになる会社もあるでしょう。

ただ、他社の導入率を見ても、自社がやるべきかどうかの答えまでは出ません。

私たちがAI導入の相談を受けるときも、最初に見るのは会社の規模や業種ではありません。今、人が繰り返している作業の中から、AIに渡せそうなものを1つ切り出せるかを見ます。

中小企業基盤整備機構の調査では、AIを導入している中小企業は20.4%でした。一方、帝国データバンクが生成AIに絞って調査すると、中小企業の32.4%が活用しています。

調査対象やAIの定義が違うため数字には幅がありますが、少なくとも「ほとんどの会社がすでに導入している」という状況ではありません。

焦って始める必要はありません。ただ、何となく様子を見るだけだと、半年後も同じところで迷います。

この記事では、いま取り組むのか、それとも見送るのかを、自社の仕事を見ながら決められるところまで解説します。

要点

この記事の要点

  • 中小企業のAI導入率は、調査によって2割から3割台
  • 専任のAI担当者や部署がなくても、検討は始められる
  • 最初に見るのは、時間を測れる繰り返し作業があるかどうか
  • 見送る場合も、次に見直す時期まで決める

中小企業のAI活用の現在地

まず、どのくらいの中小企業がAIを使っているのかを見ておきます。

中小企業基盤整備機構が2026年3月に公表した調査では、AIを導入している企業は20.4%でした。内訳は、全社的な導入が3.6%、一部業務での導入が16.8%です。

導入を予定・検討している企業は18.6%。一方で、61.0%は導入予定なしと回答しています。回答企業は1,647社です。

帝国データバンクの生成AIに関する調査では、全企業の34.5%が業務で生成AIを活用していました。規模別では、中小企業が32.4%、小規模企業が28.0%です。

さらに、ラグザスが全国のビジネスパーソン3,000人に行った調査では、従業員1〜300人の会社でAIを導入しているという回答は23.7%でした。

3つの調査によるAI導入率

調査

測っていること

対象

割合

中小企業基盤整備機構

AIを導入しているか

中小企業1,647社

20.4%

帝国データバンク

生成AIを活用しているか

全国10,312社

34.5%

ラグザス

勤務先でAIを導入しているか

ビジネスパーソン3,000人

中小企業23.7%

この3つは同じものを測った数字ではありません。

特に帝国データバンクの調査は生成AIの活用を聞いているため、社員が文章作成や情報収集に生成AIを使っている状態も含まれます。一方、中小機構は画像認識や需要予測なども含めたAIサービスの導入状況を企業に聞いています。

ここで確認したいのは細かな数ポイントの差ではなく、中小企業のAI活用は増えているものの、まだ半数を超えてはいないという現在地です。

周りでAIの話を聞く機会が増えたからといって、自社だけが大幅に遅れていると考える必要はありません。

規模と業種別の利用状況

会社が大きいほど、生成AIの利用率は高くなっています。

生成AIを活用している企業の割合を規模別に示した横棒グラフ。大企業46.5%、中小企業32.4%、小規模企業28.0%

帝国データバンクの調査では、生成AIを活用している割合は次のとおりでした。

  • 大企業:46.5%
  • 中小企業:32.4%
  • 小規模企業:28.0%

大企業と小規模企業では18.5ポイントの差があります。それでも、小規模企業でまったく使われていないわけではなく、約3割はすでに使っています。

業種でも差があります。

中小企業基盤整備機構の調査から、回答企業数の多い業種を抜き出すと次のようになります。

業種別のAI導入率

業種

AIを導入している割合

回答企業数

情報通信業

54.6%

33社

小売業

19.4%

257社

宿泊業、飲食サービス業

18.0%

167社

卸売業

16.8%

119社

製造業

16.4%

196社

建設業

15.9%

246社

運輸業、郵便業

9.7%

31社

情報通信業はかなり高いですが、それ以外は1〜2割台に集まっています。

なお、情報通信業と運輸業、郵便業は回答企業が30社ほどしかないため、この数字だけで業界全体を判断するのは無理があります。

自社の資本金帯や業種にもっと近い数字を確認したい場合は、こちらで詳しく説明しています。

ここで業界平均を追いかけすぎても、あまり意味はありません。

たとえば同じ製造業でも、受注情報をExcelへ手入力している会社と、基幹システムまでデータがつながっている会社では、AIを入れられる場所がまったく違います。

業種別の導入率は現在地を見るには使えます。ただ、自社がAIを使うべきかどうかは、この数字では決まりません。

専任担当者がいない会社の進め方

AI担当者を採用してから始めようとすると、多くの中小企業はそこで止まります。

中小企業基盤整備機構の調査では、AIやITの導入を進める体制について、特定の部署を置かず、経営者や現場が個別に進めている企業が88.0%でした。

担当者についても、特定の担当者を置かずに経営者や現場従業員が進めている企業が85.9%です。

専任部署がある企業は2.3%、専任担当者がいる企業は3.0%しかありません。

なので、専任担当者がいないこと自体を、AIを検討しない理由にする必要はありません。

ただし、誰が見るのか分からない状態でツールだけ契約するのはおすすめしません。導入したものの、ほとんど使われずに月額料金だけ払い続ける形になりやすいからです。

新しいAI部署を作る必要はなくても、その仕事を普段やっている人には入ってもらう必要があります。

請求書の処理をAIに任せるなら、普段その請求書を扱っている人が出力結果を見る。問い合わせ対応なら、実際に返信している人が確認する。

会社としてAI導入を進めるときに何を決めるかは、こちらで詳しく説明しています。

AI導入とは?社員が使っても進まない理由AI導入とは、人が行っていた作業の一部をAIに処理させ、人が確認する流れを仕事に入れることです。個人利用から会社導入へ進む条件、候補業務の見つけ方、始める前の線引きを解説します。AI導入記事を読む

導入を決める2つの条件

ここまでの数字より、こちらのほうが重要です。

自社でAIを試すか迷っているなら、次の2点を確認してください。

  1. 繰り返している作業の中に、発生回数と所要時間が分かるものがあるか
  2. AIが出した結果を見て、間違いに気づける人がいるか
AIを試すか見送るかの判断フロー図。問い1「発生回数と所要時間が分かる作業があるか」、問い2「間違いに気づける人がいるか」の両方に答えられれば試す、どちらかに答えられなければ見送るへ分岐する

たとえば、毎月40件の請求書を手入力していて、1件あたり10分かかっているとします。

この場合は、月に約400分かかっていることが分かります。AIや自動化を試したあと、200分まで減ったのか、ほとんど変わらなかったのかも比べられます。

反対に、何となく忙しい業務をAI化したいという状態では、試したあとに良かったのか悪かったのか判断できません。

中小企業基盤整備機構の調査でも、AIを導入済み、または検討中の企業に目的を聞くと、87.0%が業務効率化や作業時間の短縮を挙げています。

であれば、最初から時間を測れる仕事を選んだほうが話は早いです。

もう1つが、結果を確認できる人です。

AIに作業を任せても、最終判断まで丸ごと渡す必要はありません。むしろ最初は、人が途中で止められる形にしておいたほうが扱いやすいです。

AIに任せる作業と、人が確認する作業を分ける。

この切り分けができるなら、専任のAI担当者がいない会社でも始められます。

実際にAIでどれくらい作業時間が減るのかは、こちらのデータで詳しく説明しています。

見送りを選ぶときの条件

先ほどの2つに答えられないなら、今はAIを導入しないという判断でも構いません。

無理にAIを入れるより、そのほうがいい場合もあります。

たとえば、紙で届いた情報を社員がExcelへ打ち直し、そのExcelをさらに別のシステムへ入力している会社があるとします。

ここへAIを入れても、手入力そのものが消えないことがあります。

こういう場合は、AIより先に通常のシステム連携や自動化を検討したほうがいいです。CREARIでも、AIを使わなくても解決できる仕事なら、通常の自動化をご案内しています。

中小企業基盤整備機構の調査でも、業務の80%以上が手作業という企業のAI導入率は26.7%でした。一方、手作業が20%未満の企業では56.8%です。

約30ポイントの差があります。

もちろん、この調査だけで「先にIT化したからAI導入率が上がった」とまでは言えません。因果関係を調べた調査ではないためです。

それでも、紙や手入力が大量に残っているなら、一度AIから離れて仕事の流れを見たほうがいいケースはあります。

見送るなら見直す日を決める

見送りで一番避けたいのは、特に理由もなく半年、1年と放置することです。

今はやらないと決めるなら、最低限、次のことを残しておきます。

見送りを判断にするために残しておくこと

  • 次に確認する時期
  • 予定より早く見直す条件
  • 社内への共有

たとえば、次の期初にもう一度確認する。それまでに担当者が退職したり、取引先からデータ形式でのやり取りを求められたりしたら前倒しで検討する。

ここまで決めてあれば、見送りは立派な判断です。

何も決めずに様子を見るだけだと、半年後にまた最初から考えることになります。

社員と取引先への伝え方

AIをやるにしても、やらないにしても、説明は長くする必要はありません。

伝えるのは、結論、理由、次にやることです。

言い方の骨組み

AIを試す場合

今は見送る場合

結論

月次の請求書作成から試す

今期はAI導入を見送る

理由

毎月40件を手入力しており、時間を測れるため

効果を測れる繰り返し作業をまだ切り出せていないため

次

3か月試し、時間が半分にならなければ止める

半年後に再確認し、人員変更があれば前倒しする

AIを試すなら、たとえばこう説明できます。

うちは月次の請求書作成からAIを試します。毎月40件を手入力していて、効果を時間で比べられるためです。3か月試して、時間が半分にならなければ止めます。

見送る場合も同じです。

今期はAI導入を見送ります。時間を測れる繰り返し作業をまだ切り出せていないためです。半年後にもう一度確認し、それまでに人員が減った場合は前倒しで検討します。

これなら、AIに積極的だからやる、慎重だからやらないという話になりません。

自社の仕事を見て決めた、と説明できます。

決定後の最初の一歩

AIを試すと決めても、いきなり製品比較を始める必要はありません。

まず候補になる作業を1つ書き出します。

確認したいのは次の4項目です。

候補になる作業を書き出す4項目

  • 作業の名前
  • 月に何回発生し、1回に何分かかっているか
  • 紙や手入力で受け渡している情報がどこにあるか
  • 出力結果を確認できる人は誰か

ここで特に見てほしいのは2つ目です。

今の作業時間が分からなければ、AIを試したあとに効果を測れません。

月30回、1回20分なら月600分。これが300分になれば効果は分かりやすいです。

一方で、導入前の時間を測っていなければ、便利になった気はするものの、本当に続ける価値があるのか判断しづらくなります。

ツールを選ぶのは、そのあとです。

まとめ

中小企業のAI活用は進んでいますが、まだ導入していない会社のほうが多い調査もあります。専任部署を置いていない会社も珍しくありません。

なので、他社の導入率や会社の規模を見て、急いで結論を出す必要はありません。

見るところはもっと身近です。

人が繰り返している作業を1つ切り出せるか。そこで使っている時間を測れるか。AIが出した結果を確認できる人がいるか。

ここまで揃っているなら、まず1業務で試せます。

逆に、候補になる作業が出てこない、紙や手入力が大量に残っているという状態なら、AIを急がないほうがいいケースもあります。その場合は、半年後など見直す時期まで決めておけば十分です。

実際に難しいのは、その次です。

書き出した作業をAIに任せられるのか。それとも通常のシステム化や自動化で十分なのか。AIを使うとして、どこまで任せて、どこから人が確認するのか。

ここは業務の手順を見ないと決められません。

CREARIでは、年間40社以上のAI導入を支援しており、対象業務がまだ決まっていない段階から相談いただくケースもあります。AIを使う必要がないと判断した場合は、通常の自動化を含めて提案させていただいてます。

初回の相談では、主に次の内容を確認します。

  • 現在の仕事の流れと手入力が残っている場所
  • AIへ渡す部分と、人が確認する部分
  • 試す期間と、継続するか止めるかの基準

候補になる作業が1つ書けていれば、その段階から相談できます。

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