相談する
AI導入

AI業務効率化|作業は速くなるのに、会社の数字が変わらない理由

AI業務効率化|作業は速くなるのに、会社の数字が変わらない理由のアイキャッチ画像

執筆者

AIを入れると、作業そのものは実際に速くなります。ところが半年後に見てみると、残業時間も人数も部門の処理件数も、去年とほとんど変わっていない。効率化できたのかと聞かれて、答えに詰まる。この状態は、担当者の使い方が悪いから起きているわけではありません。速くなった分の時間がどこへ行ったかを、誰も決めていないからです。

この記事では、AIで実際にどれだけ時間が減るのかと、その削減が会社に残る場合と残らない場合を分けているものを、調査データをもとに説明します。読み終えたら、自社で浮く時間の桁を見積もり、その時間を何に使うかを決められます。

要点

この記事の要点

  • AIで減るのは作業1件あたりの所要時間。人員でも総労働時間でもないこと
  • 生成AIを使っているタスクの所要時間は平均16.7%短縮。週にして26.4分
  • 作業が速くなっても、会社全体の効率化にはつながっていないという調査結果
  • 浮いた時間の使い道を先に決めていない限り、削減は日常業務に吸収されること
  • ルールで厳しく縛った組織は、削減時間も活用の成熟度も低い水準

AIの業務効率化で減るもの

AIによる業務効率化で直接減るのは、作業1件あたりの所要時間です。 人員が減るわけでも、会社の総労働時間がそのまま減るわけでもありません。

会議の議事録を例にすると分かりやすくなります。録音を聞き直して文字に起こす、その工程の時間が短くなる。会議の数は変わりませんし、議事録に目を通して承認する人の役割も変わりません。細かい話に見えますが、ここを混ぜたまま読むと、このあと出てくる数値をすべて誤読することになります。

減るのが作業時間だとすると、次に決まるのはどの作業をAIに渡すかです。渡す作業の選び方と、渡す前に社内で決めておく項目は、対象になりやすい業務の型と、始める前に決める3項目で説明しています。

AI導入とは? 製品を選ぶ前に決めておく3つのことAI導入とは、AIを買うことではなく、どの仕事をどこまで任せ、誰が結果を確認するかを決めることです。個人利用との違い、他社が止まっている場所、自社で候補になる業務の見つけ方、始める前に決める3点を公的調査をもとに整理しました。AI導入記事を読む

どれくらい短くなるのか

生成AIを活用しているタスクでは、その所要時間が未利用時と比べて平均16.7%短くなっています。週あたりでは26.4分です。

生成AIによるタスクの所要時間削減

何を測った数値か

数値

測定の条件

生成AIを活用しているタスクの所要時間の削減率

平均16.7%

生成AIを業務で使っている人と、使っていない人の比較

同じく、週あたりの削減時間

26.4分

対象は生成AIのみ。画像認識や異常検知は含まない

調査の対象者と時期

正規雇用者3,000人

2025年10月に実施されたインターネット調査

この記事で「同調査」と書いている場合は、すべてこのパーソル総合研究所の調査を指します。確認日は2026年8月25日です。

出典はパーソル総合研究所「生成AIとはたらき方に関する実態調査」です。生成AIを使っている作業に限れば、週に30分弱が浮いている計算になります。

用途によって削減の幅は変わる

同調査を用途別に見ると、削減時間が長い上位3つは次のようになっています。全体の平均が週26.4分にとどまるのは、これ以外の用途を含めた数字だからです。

  • 企画、相談、思考整理:週36.9分
  • 文書と資料の作成、編集:週35.1分
  • データ分析とレポーティング:週33.6分

上位に来ているのは、答えが1つに決まらない作業です。 企画を考える、相談相手として使う、書きかけの文章を直す。いずれも、出てきたものをそのまま使うのではなく、人が読んで手を入れることを前提にした使い方になります。自社で候補を探すときは、この性質に近い作業から見ると桁を見積もりやすくなります。

この数字が測っていないもの

週26.4分を自社に当てはめる前に、同調査が何を測ったものかを確かめておきます。

この数字が測っていないもの

項目

この調査が測ったもの

この調査が測っていないもの

対象者

全国の正規雇用者3,000人。個人への調査

企業への調査ではないため、企業の何%とは読めない

対象のAI

生成AI

画像認識や異常検知など、生成AI以外のAI

比較の範囲

生成AIを活用しているタスクの所要時間

1日の労働時間全体や、部門全体の工数

回答の性質

本人の申告にもとづく回答

実測したログや、第三者による計測

この表が示しているのは、16.7%という数字を当てはめてよい範囲です。とくに比較の範囲には注意が必要になります。16.7%は生成AIを使っているタスクだけを取り出して比べた数字であり、会社の業務時間が16.7%減るという意味ではありません。自社に当てはめるときは、対象にする作業の現在の所要時間に掛けて、桁だけを見ます。

なぜ会社全体の数字に出ないのか

作業が短くなっても会社全体の効率化につながらないのは、削減できた時間の多くが、そのまま日常の業務に吸収されているためです。

「どれくらい短くなるのか」で挙げた同調査は、タスクごとの効率化の効果が組織全体の効率化にほぼつながっていないと述べています。理由として挙げられているのは次の3つです。

  • 生成AIを活用している人が少なく、使われている用途も狭いこと
  • 社内へ広げるためのコストがかかり、その負担が一部の人に偏っていること
  • 削減できた時間の多くが、日常の業務に吸収されていること
AIで短くなった作業時間が日常業務に吸収され、会社の数字が変わらないままになる流れを示した図

最後の1つが、この記事で最も重い論点になります。同調査によれば、削減できた時間のうち6割以上が引き続き仕事に使われており、その中身の多くを占めるのが日常の業務でした。空いた時間は消えるわけではありません。今まで手が回っていなかった通常業務へ流れていきます。

これ自体は悪いことではありません。滞っていた業務が進むのは、それ自体が改善です。ただし、その状態は会社の数字としては見えません。残業時間も人員も部門の処理件数も変わらないまま、担当者だけが少し楽になったと感じている状態になります。効果を役員会で説明しようとしたときに材料がないのは、このためです。

生成AIを使っているのは誰か

業務で使っている割合が最も高いのは、部長や課長といった管理職です。代表取締役や社長、役員はそれより低い水準にとどまっています。全体で見ると、業務で使っている人は就業者の32.4%です。これは働いている人を数えた割合で、企業を数えた割合ではありません。

使用頻度の内訳は次のとおりです。同調査のスクリーニングで、全国の就業者19,855人が対象になっています。

※ 職位別の数値は、公表資料に母数の記載がないため、ここでは順序だけを示しています。

生成AIの使用頻度別の内訳

業務での使用頻度

就業者に占める割合

社内での状態

週4日以上

11.7%

業務の手順として定着している段階

週1日から3日

12.4%

使う場面が決まってきた段階

月に数日以下

8.4%

個人が試している段階

合計

32.4%

業務で生成AIを使っている人の割合

定着していると言えるのは、上の1行分だけです。社内に使っている人がいるという状態と、業務の手順に組み込まれている状態のあいだには、まだ大きな幅があります。

誰がどれだけ使っているかを社内で把握できている会社は、多くありません。CREARIが手がけてきた領域にも、全社のAI利用ゲートウェイと利用状況の可視化があります。

職位ではなく規模や業種で自社の位置を見たい場合は、規模別、業種別に見た中小企業のAI活用の現在地にデータがあります。

中小企業のAI活用|「様子見」で終わらないための判断条件中小企業のAI導入率は20.4%、生成AIの活用は中小32.4%。母数つきの調査で規模・業種・体制の実態を示し、やるか先送りかを自社の状態で決める2つの問いと、「今はやらない」が判断として成立する条件を解説します。AI導入記事を読む

経営層自身が使っていないことは、同調査の範囲では珍しい状態ではありません。ただし、この数字は経営層が使っていないから社内で進まない、という因果を示したものではありません。分かるのは、経営層が使っていない会社は多数派である、というところまでです。そのうえで、次に決めることは自分で使うかどうかではありません。浮いた時間を何に使うかのほうです。

浮いた時間の使い道の決め方

浮いた時間の使い道は、AIを使い始めるより前に決めます。決めていなければ、その時間は日常の業務に吸収されます。 前章の調査結果から言えるのはここまでで、決めれば必ず残るという保証があるわけではありません。

浮いた時間の使い道を決める4つの手順が、上から下へ順番に並んだフロー図。1「どの作業でどれだけ空くかを出す」、2「空いた時間を何に充てるか決める」、3「誰の予定として確保するか決める」、4「見直す間隔を決める」の順に矢印でつながっている

同調査も、削減できた時間をどこへ振り向けるかのルールをあらかじめ明示することと、その振り向け先として、すぐに成果が出るとは限らない探索的な業務を例示することを提言しています。調査が示しているのは、ルールを明示するというところまでです。 実際に何を決めればルールになるのかは、次の4つに分けると埋めやすくなります。

浮いた時間の使い道の決め方

決めること

決め方

決まらないときは

どの作業で、誰の時間が、どれだけ空くか

対象を1つの作業に絞り、下の式で桁を出す

担当者に1週間だけ記録してもらうところから始める

空いた時間を何に充てるか

放置されている業務名まで下ろす。他の業務に回す、では決めたことにならない

その作業の担当者が、今いちばん手が回っていないものを1つ選ぶ

誰の予定として確保するか

作業を減らす部署と、空いた時間を使ってほしい部署が違う場合は、先に合意を取る

部署をまたぐ場合は、ここが最後まで残る

見直す間隔をどうするか

1か月後、遅くとも3か月後に一度見る

この時点で使い道が実行されていなければ、時間は吸収されたと判断する

1つ目の桁は、次の式で出します。

対象の作業に今かかっている週あたりの時間 × 16.7%

= 週に浮く時間の目安

出典: パーソル総合研究所「生成AIとはたらき方に関する実態調査」(本文で示した削減率16.7%にもとづく計算式)

上から順に決めます。2つ目でつまずく場合、多くは対象の作業が大きすぎます。作業の絞り方は、候補になる業務をどう絞るかで扱っています。

効率化が続く会社と止まる会社

続くかどうかを分けているのは、ルールの厳しさではありません。 同調査では、利用を強く統制している組織は、削減時間も個人の活用の成熟度も低い水準にとどまっています。

調査は、正規雇用者3,000人の回答傾向から、企業の生成AIの広がり方を4つのタイプに分けています。

※ 現場任せの割合は、公表資料に明示がないため書いていません。

企業の生成AIの広がり方・4タイプ

タイプ

社内の状態

タスクの削減時間

個人の活用の成熟度

仕組み化

会社として使い方を整備している

中程度

最も高い

手探り運用

整備の途中にある

中程度

中程度

統制

利用を厳しく制限している

低い

低い

現場任せ

会社としての整備がない

最も長い。週52.2分

低い

4タイプのうち最も多いのは仕組み化で、回答の4割強を占めます。次いで手探り運用が4割弱、統制が1割弱です。

読み取れるのは、削減時間と成熟度が同じ方向を向いていないことです。現場任せの組織は削減時間が最も長い一方で、活用の成熟度は伸びていません。 調査自体も、短期的な効率化は現場の部分最適でも実現しうるが、持続的な活用には仕組みの整備が要ると述べています。

逆に、利用を厳しく制限した組織は、削減時間も成熟度も低い水準です。社内のルールを固めることは、効率化を進めることとは別の作業になります。

効果を何で測るか

測る単位は、AIを入れる前に決めます。作業1件あたりの所要時間か、同じ時間で処理できた件数か、確認にかかった時間か。どれを見るかで、出てくる結論が変わります。

効果を何で測るか

測る単位

向いている業務

測る前に必要なこと

作業1件あたりの所要時間

手順が決まっていて、件数が安定している業務

導入前の所要時間を記録しておく

同じ時間で処理できた件数

作業量が季節で変動する業務

比較する期間の作業量をそろえる

確認にかかった時間

AIの出力を人が直してから使う業務

作った時間と直す時間を分けて記録する

3つ目は見落とされやすい部分です。生成AIの出力はそのまま使えるとは限らず、確認と修正の時間が新しく発生します。ここが伸びていると、作業そのものが速くなっても全体では変わっていないことがあります。

一方で、数字にしにくいものもあります。担当者の負担感、急ぎの依頼に対応できる余裕、属人化していた作業を他の人が引き継げるようになったかどうか。これらは測定の対象にはしにくいものの、続けるかどうかの判断材料にはなります。測れないものは、測らないと決めたうえで、担当者への聞き取りとして別に扱います。数値化しようとして代わりの指標を作ると、その指標を満たすこと自体が目的になっていきます。

まとめ|浮いた時間の使い道を先に決めたかで分かれる

AIによる業務効率化は、作業単位では実際に時間を減らしています。生成AIを使っているタスクで平均16.7%、週26.4分。投資判断の材料として使える大きさです。

一方で、その削減が会社として何かを変えるかどうかは別の話になります。使い道を先に決めることが、効果を会社に残すための最低条件です。決めていなければ、時間は日常の業務に吸収され、担当者の実感としては残っても、会社の数字としては出てきません。

着手を判断する前に、次の4つを手元で埋めてみてください。

着手前に埋めておく4つの項目

  • 候補になる作業を1つ選ぶ
  • そこで浮きそうな時間の桁を出す
  • その時間の使い道を決める
  • 効果を測る単位を決める

4つとも埋まれば、社内で説明できる状態になっています。

使い道を決めきれない場合の相談先

埋まらないのは、たいてい3つ目です。空いた時間を誰の予定として確保するかは、作業を減らす部署だけでは決まらず、部署をまたぐ判断になります。ここで止まっている場合は、相談から入ることもできます。

CREARIは、AI導入を現状分析から導入設計、PoC検証(小さく試して見極める工程)、本番導入、運用改善まで支援しています。年間40社以上のAI導入を支援しており、そのうち半数以上が、対象業務が決まっていない段階からの相談です。対象が決まっていない状態から始めることは、例外ではありません。

※ 支援社数の実績は、CREARIが2026年8月22日時点で提供した値です。

初回のご相談では、候補の作業の現在の手順、AIに渡す部分と人が確認する部分の切り分け、浮いた時間の使い道と見直しの間隔、試す期間と止めどきを一緒に整理します。AIではなく通常の自動化で足りる場合は、そのようにお伝えしています。

相談前に、対象にしたい作業、現在の手順、扱う情報、社内で決まっていない点を書き出しておくと話が早く進みます。問い合わせフォームにはご予算感の項目があるため、概算の枠だけでも決めておくと入力で止まりません。

使い道を決めきれない場合の相談先

ご相談とお見積りは無料です。最短1営業日でご返信します。

AI活用について相談する

参考にした調査

  • パーソル総合研究所「生成AIとはたらき方に関する実態調査」(2026年2月3日公開)確認日 2026年8月25日
  • スクリーニング調査:全国の就業者19,855人。労働力調査にもとづく性別と年齢10歳階級の構成比で割付
  • 本調査:正規雇用者3,000人。調査時期は生成AI利用群が2025年10月24日から26日、非利用群が2025年10月27日から28日
  • 調査方法:調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
  • 報告書全文はPDF(約5.8MB)で公開されています

執筆者

祖父江 聡士(株式会社CREARI)東京大学大学院修了後、AI SaaS企業のストックマークや東証プライム上場企業のプレイドで新規事業のシステム開発責任者を歴任。独立後はプライム上場企業を含む80社以上のAI導入・業務システム開発を支援し、生成AI、RAG、データ基盤の設計から実装までを得意とする。