AI開発の費用|工程ごとに金額と、稟議への出し方

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AI開発を外部に頼むときの費用は、要件定義、試作、本開発、その後の調整と、工程ごとに積み上がっていきます。
工程別の相場だけなら、検索すればいくつも出てきます。難しいのは、その数字を見たあとです。
並んでいる金額のうち、どれを自社の予算として見ればいいのか。まだ総額が決まっていない状態で、稟議には何を書けばいいのか。実際には、ここで止まりやすいです。
この記事では、AI開発のどこに費用が乗るのかを工程ごとに分けながら、金額が決まっていく順番と、総額が確定していない段階での稟議の出し方まで説明します。
この記事の要点
この記事の要点
- AI開発の費用は、工程を1つ終えるごとに次の工程の金額が決まっていく
- 経済産業省はAI開発を4段階に分け、各段階で続行と中止を選べる進め方を示している
- 見積もりが会社ごとに大きく違うときは、会社そのものより、各社が置いている前提の違いを見たほうがよい
- 稟議に出すのは、最初から総額1本ではなく、次の1段階の金額と、そこで何が分かるか
AI開発の費用として確かめられる数字
AI開発を外部へ委託するときの費用のうち、公式に価格が公開されているものは多くありません。
既製のAIツールであれば公式サイトに料金が載っていることがありますが、自社の資料や仕事の流れに合わせて作る部分には、基本的に一律の公開価格がありません。案件ごとに、作る範囲も使うデータも違うためです。
料金が公式に公開されている既製ツールの費用そのものについては、こちらで詳しく説明しています。
AI導入の費用|確認できる金額と、自社の数字の作り方AI導入の費用を、公式価格が確認できる範囲とそうでない範囲に分けて説明します。ChatGPTやMicrosoft 365 CopilotなどのAIツールの価格を出典と確認日つきで示し、見積書に載らない費用、見積もり依頼前に決める4項目、補助金を使った場合の実質負担までを扱います。AI導入記事を読むそこで多くの人が「AI開発 費用」「AI開発 相場」といった形で検索します。
相場を見ること自体は問題ありません。ただ、その数字を社内へ持っていくのであれば、どこから出てきた金額なのかは先に確認しておきたいところです。
2026年8月26日に「AI開発 費用」の検索上位10件を確認しました。
- 費用の金額について一次情報を示している記事は、10本中0本
- 10本のうち8本は、本文を直接開いて確認
- 最上位の記事は「1次データに基づく」と記載していたが、示されていた出どころは他社のオウンドメディア
- 別の1本は、複数の開発会社や比較メディアが公開している相場情報を横断したものだと説明していた
これは、「AI開発には相場が存在しない」という話ではありません。
今回確認できたのは、検索して最初に出てくる10本の中には、金額そのものの一次情報が示されていなかった、ということです。
ただ、稟議に出す数字としては、「その金額はどこから出したのか」と聞かれたときに説明できないままでは使いにくいです。
そこで次に見るべきなのが、金額そのものではなく、金額が決まっていく順番です。
金額が確定していく順番|開発の4段階
経済産業省の「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」は、AI開発を4つの段階に分ける進め方を示しています。
最初の2つであるアセスメントとPoCは、いきなり本番のシステムを作るのではなく、その前に「そもそもできそうか」「狙った水準まで届きそうか」を確かめる段階です。
同ガイドラインでは、この進め方を「探索的段階型」の開発方式と呼んでいます。最初に要件を固めて、そのとおりに作るウォーターフォール形式とは違い、途中で確認しながら進める形です。

AI開発の4段階
段階 | この段階ですること | この段階で費用が乗るところ | 終わった時点で分かること |
|---|---|---|---|
アセスメント段階 | 手元のデータで実現できそうかを見る | 現状の確認と、データの中身を見る作業 | 先へ進む価値があるかどうか |
PoC段階 | 試作して、狙った精度が出るかを検証する | 試作を作る作業と、検証を回す環境の利用料 | 実務で使える水準に届くかどうか |
開発段階 | 実際に使う形のモデルとシステムを作る | 設計と実装、既存システムとの連携、データを使える形へ整える作業 | 本番環境で動く成果物ができる |
追加学習段階 | 運用しながらデータを足して調整する | API利用料、監視、精度の再確認 | 使い続けるために毎年何が必要か |
実際の金額は、自社の案件について見積もりを取って初めて入ります。
同ガイドラインでは、AI開発について、最初から開発対象を確定させることや、性能を事前に保証することが難しいとも述べています。
この性質は、そのまま費用にも影響します。作るものが決まりきっていないのであれば、金額も決まりきりません。
次の段階の金額は、その前の段階が終わってから決まる。
アセスメントで手元のデータがどの程度使えるかが分かって、初めてPoCの範囲が決まります。PoCで精度が見えて、初めて本開発で何をどこまで作るのかが決まります。
そう考えると、最初の時点で総額を1つの数字に決めきれない理由も分かりやすくなります。
途中でやめたときの費用と成果物
この進め方を社内で説明すると、早い段階で聞かれるのが「途中でやめたらどうなるのか」です。
先ほどのガイドラインでは、必要な性能を持つ成果物を作ることが難しいと分かった場合には、次の段階へ進まない選択もできるとしています。
段階ごとに契約するのであれば、支払うのは基本的にそこまで進めた段階の対価です。
そのうえで確認しておきたいのが、途中で止めたときに何が手元へ残るのかです。
同ガイドラインでは、権利の帰属や利用範囲を考える対象として、次の4つを分けています。
- 生データ。元になった自社のデータそのもの
- 学習用データセット。生データを学習に使える形へ整えたもの
- 学習用プログラム。学習させるための仕組み
- 学習済みモデル。学習の結果できあがったもの
アセスメントやPoCまで進んでいれば、「自社のデータが使える状態だったか」「どこまで整えれば使えそうか」といった検証結果が残ります。場合によっては、整えたデータそのものが残ることもあります。
ただし、何が自社のものになり、何が開発会社側に残るのかは契約で決める部分です。
段階を区切って発注するのであれば、その段階が終わったときに何を受け取れるのかも、先に確認しておくことが大切です。
止めたときに何も残らない契約と、検証結果や整理したデータが残る契約では、同じ金額でも意味が変わります。
見積もりが会社ごとに食い違う理由
同じ内容を3社に送ったのに、返ってきた金額が大きく違う。
このとき、すぐに「高い会社と安い会社がある」と考えるより、先に見たほうがいいところがあります。各社が、どんな前提で見積もっているかです。
依頼側が決めていない項目は、開発会社側で仮定を置くことになります。その状態では、3社に同じ依頼を出したつもりでも、実際には違うものを見積もらせています。
特に金額が動きやすいのは、次の4つです。
見積もりで金額が動きやすい4つの前提
先に決める前提 | 依頼書に書く形 | 決めていないと |
|---|---|---|
できたと判断する基準 | 何を、どの数字で測り、誰が合格を判定するか | 各社が違う精度を想定し、作る量が変わる |
例外的な入力の扱い | 想定外の書式や項目の抜けを、どこまで拾うか | 例外処理の作り込みに歯止めがかからない |
データを整える作業の担当 | 使える形へ直す工数を、どちらが持つか | 一方が相手の作業だと見なして計算する |
権限と記録の要件 | 誰が何を見られるか、記録をどこまで残すか | あとから追加になり、金額が動く |
たとえば「精度は高いほうがいい」とだけ書いた場合、90%を想定する会社と99%を想定する会社では、必要な検証量も作り込みも変わります。
ここで挙げている4項目は、社内で何を作るかを決めるための項目そのものではありません。決めた内容を、見積もりを取るための条件に変えるときに書くものです。
逆に、ここが空いたまま見積もりを頼むと、返ってきた金額をそのまま横並びにはできません。
もし見積書が「AI開発一式」とだけ書かれて返ってきた場合は、少なくとも次のところは分けて確認しておきたいです。
見積書「AI開発一式」を受け取ったときに確認する4項目
- 4段階のうち、どこからどこまでが見積もりに入っているか
- 何を成果物として受け取るのか
- 精度をどの基準で合格とするのか
- 運用費が何か月分含まれているか
ここまでそろえば、他社の見積もりとも比べやすくなります。
CREARIが年間40社以上のAI導入を支援する中でも、半数以上は対象業務の棚卸しから始まっています。これは調査結果ではなく、あくまでCREARIへ相談に来る会社の傾向です。
「見積もりを取りたいが、その前提を書くところまでまだ進んでいない」という段階でも問題ありません。
CREARIでは、業務課題に合わせたAIシステムの設計や開発だけではなく、その手前の課題整理から支援しています。既製のツールで足りるのか、自社向けに作る必要があるのか。そこからまだ分からない段階でもご相談いただけます。
確認した結果、AIではなく通常の自動化で十分だと判断した場合は、そのようにお伝えします。
AI開発の費用と進め方をご相談ください
ご相談とお見積もりは無料で、最短1営業日で返信します。
開発費のあとに毎年かかるもの
AI開発は、作って納品されたら支払いが終わるとは限りません。
運用を始めると、次のような費用がかかります。
- 使った分だけ払うAPIの利用料
- 動き続けているかを確認する監視と、止まったときの対応
- 精度が落ちていないかの定期的な確認
- AIモデルやライブラリが更新されたときの対応
- 使う人からの問い合わせ対応
そのため、予算は初年度と2年目以降を分けて、最低でも2年分の形で見ておくほうが安全です。
2年目の金額そのものは開発が終わるまで決めきれない場合がありますが、費目と、翌年から12か月分が乗ることまでは今の段階でも書けます。
工程ごとに向く契約の形
AI開発では、金額だけではなく、各段階をどの契約で進めるかも確認しておきたいところです。
契約は大きく請負と準委任に分かれます。
先ほどの経済産業省のガイドラインでは、AI開発について、どの段階でも準委任型の契約が親和的だとしています。特に開発段階については、請負型の契約にはなじみにくいという見方が示されています。
理由は、AI開発では事前に性能を完全に保証することが難しいためです。
段階ごとに向く契約形態
段階 | ガイドラインが親和的とする形 | 発注側が確かめること |
|---|---|---|
アセスメント、PoC | 準委任型 | 検証結果を受け取れるか |
開発 | 準委任型。請負型はなじみにくいとされる | 何をもって完了とするか |
追加学習 | 準委任型 | 対応の範囲と頻度 |
ただ、最初から契約の名前だけを決めても、それだけでは足りません。
先に見ておきたいのは、その段階で何をしてもらい、どこまでできたら終わりなのかです。
まとめ|稟議に出すのは総額ではなく、次の1段階
AI開発の費用は、最初に総額が決まって、その金額どおりに買うものとは少し違います。
アセスメント、PoC、開発、追加学習と進み、1つの段階で分かったことを使って次の範囲を決める。金額もその順番で決まっていきます。
そのため、まだ総額が決まっていない段階で稟議を出すのであれば、無理に1つの数字にまとめなくても構いません。
先に書いておきたいのは、次の3つです。
先に書いておきたい3つ
- 次の1段階でいくら使うのか
- その段階が終わると何が分かるのか
- 結果によっては、そこで止める選択もあること
金額が動くこと自体が問題なのではなく、どこで金額を決め直すのか、その前に何を確認するのかが決まっているかどうかが大切です。
「最初の1段階をどこまでにするか」は、自社だけでは決めにくいこともあります。
社内では業務の事情は分かっていても、どの範囲なら技術的に検証できるのかまでは判断できないことがあります。この境目に来たときが、外の会社へ相談するタイミングです。
CREARIでは、業務課題に合わせたAIシステムの設計と開発を、課題整理から本番運用、その後の改善まで支援しています。
「まずどこまでをアセスメントに入れるのか」「PoCまでを一度区切ったほうがいいのか」といった、最初の範囲の切り方からご相談いただけます。
最初の範囲の切り方からご相談ください
ご相談とお見積もりは無料で、最短1営業日で返信します。まだ予算が決まっていない場合は、「まずはアセスメントとPoCまでを区切って見積もりが欲しい」と、金額ではなく範囲のほうを書いていただいても大丈夫です。
監修・執筆者
祖父江 聡士。東京大学大学院修了後、AI SaaS企業のストックマークや東証プライム上場企業のプレイドで新規事業のシステム開発責任者を歴任。独立後はプライム上場企業を含む80社以上のAI導入・業務システム開発を支援し、生成AI・RAG・データ基盤の設計から実装までを得意とする。
参考にした公式情報
- 経済産業省 AI・データの利用に関する契約ガイドライン 1.1版。AI編は平成30年6月公表 確認日 2026年8月26日
- 検索上位10件の実査。「AI開発 費用」でBingの日本語版を2026年8月26日に確認。10件のうち8件は本文を直接確認。Googleの順位ではありません


