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AI開発の3つの型|開発範囲と発注前に決めること

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AI開発で最初に決めるのは、使用する技術ではなく開発範囲です。既存のAIサービスをそのまま使うのか、自社向けにカスタマイズするのか、新しいシステムを開発するのかを決めます。開発範囲が曖昧なまま見積もりを依頼すると、開発会社ごとに前提が変わり、費用や期間を正しく比較できません。

この記事では、AI開発を3つの型に分け、自社がどの型に当てはまるかを判断する条件を説明します。記事を読むことで、自社に必要な開発の型を選び、内製する工程と外注する工程を整理できます。

要点

この記事の要点

  • そのまま使うだけなら「利用」、自社向けに作るなら「開発」
  • AI開発の型は、汎用的AIサービス利用型・カスタマイズ型・新規開発型の3つ
  • 型選びの第一歩は、AIを使う業務を1つに絞ること
  • 発注前に決めるのは、内製と外注の分担、入力データ、納品物、権利、受け入れ基準
AI開発の3つの型(汎用的AIサービス利用型・カスタマイズ型・新規開発型)を、使うものと作るものの違いで比較した図

AIの利用と開発の境目

発注側が自社向けのソフトウェアやデータベース、既存システムとの連携部分を作ってもらうならAI開発です。提供されているAIサービスを契約し、そのまま使うだけなら利用に当たります。

経済産業省が2025年2月に公表した「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」は、AIに関する契約を利用型と開発型に分けています。ソフトウェアやデータベース、モジュール、システムの開発を伴うかどうかが境目です。

AI開発と聞くと、AIモデルを一から作る案件を思い浮かべるかもしれません。しかし、既存の生成AIに社内文書を参照させる仕組みや、業務システムとの連携機能を作る案件もAI開発に含まれます。案件によって開発範囲は大きく異なるため、発注前にどこまで開発するかを決める必要があります。

開発範囲で分かれる3つの型

経済産業省のチェックリストでは、AIの使い方を「汎用的AIサービス利用型」「カスタマイズ型」「新規開発型」の3つに分類しています。この記事では、この分類を「3つの型」と呼びます。自社で用意するものと、開発会社へ依頼する範囲を整理するための分類です。

開発範囲で分かれる3つの型

何を使い、何を作るか

自社が用意するもの

汎用的AIサービス利用型

提供されているAIサービスをそのまま使う

利用範囲のルールと、入力してよい情報のルール

カスタマイズ型

既存のAIサービスを土台に、自社向けの部分を作る

参照させる自社データと、既存システムとの連携条件

新規開発型

自社の目的に合わせて新しく開発する

学習や評価に使うデータと、成果を判断する方法

この表を使うと、自社がどの型から検討すべきかを判断できます。下の型ほど開発範囲が広くなり、発注側が決める条件も増えます。

この3つの型は、各企業がどの型を採用しているかを示す統計ではありません。経済産業省が契約実務のために整理した分類です。発注側と開発会社が、案件の範囲を共通の言葉で確認するために使います。

CREARIが手がけた領域にも、既存の仕組みをつなぎ、足りない部分を作るカスタマイズ型に当たるものがあります。

  • 定例レポート作成の自動化
  • 問い合わせから電話対応の記録までの一元管理と、メール下書きのAI生成
  • 会議の録画から議事録とタスクを作る仕組み
  • 提案資料や設計資料の作成支援

モデルを一から作らなくても、自社の業務に合わせて連携部分を作ればAI開発です。

自社に合う型を判断する条件

どの型に当てはまるかを判断する前に、AIを使う業務を1つに絞ります。「問い合わせ対応」のように業務を特定できていなければ、必要なデータや連携するシステムを決められません。

対象業務を決めたら、次の順番で確認します。

自社に合う型を判断する条件

確認すること

はい

いいえ

既存のAIサービスだけで結果が出るか

次の項目へ

カスタマイズの可否を確認

自社データや既存システムとの連携が必要か

カスタマイズ型

入力できる情報の範囲を確認

個人情報・機密情報を利用条件と社内ルールの範囲で扱えるか

汎用的AIサービス利用型

契約と利用環境を見直す

既存サービスをベースに必要な機能を作れるか

カスタマイズ型

独自モデルの要否を確認

自社固有のデータで学習・評価が必要か

新規開発型

要件を整理し直す

既存サービスの可否、データ連携の要否、個人情報の扱い、機能の作り込み可否、学習データの要否という条件を順にたどり、汎用的AIサービス利用型・カスタマイズ型・新規開発型のいずれかへ分岐する判断フロー図

個人情報や機密情報を扱うからといって、必ずカスタマイズ型や新規開発型になるわけではありません。既存サービスの利用条件や管理機能が、自社のセキュリティ基準を満たす場合もあります。

どの技術を使い、どの環境で動かすかは、自社に合う型を判断したあとに開発会社と決めます。技術を先に決めると、その技術に合わせて業務要件を変えることになりかねません。

対象業務がまだ1つに絞れていない場合は、AIに向く業務の選び方から候補を整理できます。

AI活用事例|業種別の使われ方と、自社の業務に当てはめる方法中小企業でのAIの使われ方を、業種別の集計で示しました。8業種で何に多く使われているかを回答数つきで確認し、そこから自社で最初に試す作業を1つ選ぶまでの基準を説明します。AI導入記事を読む

カスタマイズ型か新規開発型かを判断できない原因として、自社でもデータの保存場所や形式を把握していないケースがあります。CREARIは年間40社以上のAI導入を支援しており、その半数以上は対象業務の洗い出しから始まっています。

AIソリューション開発の支援内容を見る

データの確認が必要で、どの型に当たるか判断できない段階でも相談できます。

AIソリューション開発の支援内容を見る

工程ごとの内製と外注

発注側は、案件全体を内製または外注のどちらか一方に決める必要はありません。システム企画、機能要件定義、設計・実装・テスト、システム運用・保守の工程ごとに、自社で担当するか外注するかを決めます。

日本情報システム・ユーザー協会の「企業IT動向調査2026」では、東証上場企業とそれに準ずる企業のIT部門長にシステム開発の実態を尋ねています。2025年9月5日から10月24日までに957社から回答を得た調査で、AI開発だけを対象にしたものではありません。

内製と外部委託を使い分ける方針を選んだ企業は70.2%でした。「内製を増やす」「内製・外部委託の混成」「外部委託を増やす」を合計した割合で、回答企業は953社です。

工程別の回答からは、企画や要件定義を内製し、設計・実装・テストを外注する傾向が確認できます。

システム企画・機能要件定義は内製が多く、設計・実装・テストは外部委託が多く、システム運用・保守はほぼ同数であることを示す工程別比較図

工程別の内製・外注の傾向

工程

調査で確認できる傾向

外注する場合も自社で決めること

システム企画

内製が多い企業は70.9%、回答数886社

目的、対象業務、途中でやめる条件

機能要件定義

内製が多い企業は46.1%、回答数884社

現場の手順、例外、必要な機能

設計・実装・テスト

外部委託が多い企業は63.4%、回答数884社

業務で使えるかを確かめる基準

システム運用・保守

内製と外部委託がほぼ同じ、回答数903社

続けるか、直すか、範囲を広げるか

どの工程を外注しても、開発の目的や受け入れ基準は自社で決める必要があります。あわせて、社内の責任者も決めておきます。

同じ調査では、内製化の課題について953社が複数回答しています。

内製化の課題

主な課題

回答割合

開発人材の人数が足りない

52.7%

開発人材のスキルが足りない

49.6%

プロジェクトマネジメントを担当できる人材が足りない

44.4%

現在の業務に対する理解が不足している

38.2%

ビジネス要件をシステム仕様にまとめる力が不足している

34.5%

すべての工程を内製する必要はありません。現場の業務を説明する担当者と、完成したシステムを受け入れるか判断する責任者を自社に置き、設計・実装・テストを外注する方法もあります。

外注する業務の範囲と依頼先の役割を整理する際は、AIコンサルティングに依頼できる範囲も参考になります。

AIコンサルティング会社の選び方|比べる前に決める5項目AIコンサルティング会社を比べられないのは、候補が足りないからではありません。各社に渡す情報がそろっていないからです。相談前に決めておく5項目、会社のタイプ、費用が変わる理由、契約前に確かめることを説明します。AI導入記事を読む

AI開発の期間が延びる要因

開発期間は、作業量だけでは決まりません。発注側が対象業務や現在のシステムの複雑さをどこまで把握しているかによっても変わります。

JUASの同じ調査は、2025年度のシステム開発について、人月で見たプロジェクト規模と工期の状況を比べています。人月は仕事量の単位で、1人が1か月働く量を1人月と数えます。

プロジェクト規模が大きいほど、予定より遅れた割合が15.7%、38.8%、47.8%と高くなる傾向を示す比較図

プロジェクト規模別の遅延割合

プロジェクト規模

予定より遅れた割合

回答数

100人月未満

15.7%

n=1,647

100人月以上500人月未満

38.8%

n=317

500人月以上

47.8%

n=226

この調査から確認できるのは、規模の大きいプロジェクトほど遅れる割合が高いという関係です。AI開発の3つの型や、外注する範囲の広さを直接調べた結果ではありません。

工期が予定どおりにならなかった理由については、297件の回答で次の3項目が上位でした。

  • 計画時の考慮不足:52.5%
  • 想定以上に複雑だった現行業務やシステム:48.8%
  • 仕様変更の多発:42.4%

この結果だけで、遅延の原因を一つに決めることはできません。ただし、現在の業務とシステムの確認や、変更が起きそうな要件の洗い出しは、発注前に行えます。

この記事では、AI開発に必要な期間の目安を示していません。公的な調査で根拠を確認できず、案件の型や連携するシステムによっても期間が大きく変わるためです。一般的な月数を自社の案件に当てはめるのではなく、開発範囲と現在のシステムの複雑さを開発会社へ伝えることで、各社の見積条件をそろえやすくなります。

AI開発の見積もり前に決める5項目

発注側が決めておくのは、入力データ、データの利用条件、納品物、権利の範囲、受け入れ基準の5項目です。これらが決まっていないと、開発会社ごとに見積条件が異なるため、費用や期間を正しく比較できません。

AI開発の見積もり前に決める5項目(入力データ・データの利用条件・納品物・権利の範囲・受け入れ基準)を示した要点整理図

AI開発の見積もり前に決める5項目

項目

決める内容

入力データ

使用するデータと、開発会社へ渡す方法

データの利用条件

開発中と開発後に、誰が何の目的でデータを利用できるか

納品物

ソフトウェア、データベース、設定、文書のうち、何を納品してもらうか

権利の範囲

開発前からあるものと、開発中に作られたものを誰が利用できるか

受け入れ基準

どのような状態を完成とし、どの方法で確認するか

経済産業省のチェックリストは、請負契約か準委任契約かという契約の種類だけで判断せず、求める成果と品質を具体的に確認する考え方を示しています。

新規開発型では、学習用データによって結果が変わるため、契約時点で性能を確定しにくい場合があります。ただし、AIであることを理由に開発会社が責任を負わないという意味ではありません。チェックリストにも、AIシステムの開発では、契約内容に応じて開発会社が一定の責任を負うことが合理的な場合があると記載されています。

リスクを契約時に見通せない場合は、すべてを一括で契約せず、確認と開発を段階に分ける方法があります。どこまで確認できたら次へ進むかを決めれば、発注側と開発会社が各段階で条件を見直せます。

開発費用は、この5項目と開発範囲によって変わります。金額の見方と見積書を比べるポイントは、こちらで説明しています。

AI導入の費用|確認できる金額と、自社の数字の作り方AI導入の費用を、公式価格が確認できる範囲とそうでない範囲に分けて説明します。ChatGPTやMicrosoft 365 CopilotなどのAIツールの価格を出典と確認日つきで示し、見積書に載らない費用、見積もり依頼前に決める4項目、補助金を使った場合の実質負担までを扱います。AI導入記事を読む

開発の型を決めた後に確認すること

発注側が次に確認する項目は、選んだ型によって変わります。自社に合う型を決めてから調べると、確認する契約条件や技術情報を必要なものに絞れます。

開発の型を決めた後に確認すること

次に確認すること

社内で決める人

汎用的AIサービス利用型

サービスの利用条件、入力できる情報、管理機能

利用部門と情報管理の責任者

カスタマイズ型

参照させるデータ、連携先、受け入れ条件

業務責任者とシステム担当

新規開発型

学習・評価データ、試す範囲、段階ごとの継続条件

事業責任者と開発責任者

どの型に当てはまるか判断できない場合は、対象業務や求める成果が明確になっていない可能性があります。技術を選ぶ前に、誰のどの作業をどのように変えたいのかを整理します。

まとめ

AI開発では、発注側が開発範囲を先に決めます。既存サービスをそのまま使う汎用的AIサービス利用型、自社向けに変更するカスタマイズ型、新しいシステムを作る新規開発型のどれを選ぶかによって、用意するデータと自社で担当する工程が変わるためです。

まず対象業務を1つに絞ります。次に、既存サービスだけで対応できるか、データやシステムとの連携が必要か、個人情報や機密情報を扱えるか、受け入れ基準を事前に決められるかを確認します。型が決まったら、工程ごとの役割分担と見積もりに必要な5項目を整理します。この順番で進めると、開発会社ごとの見積条件をそろえられます。

Q

PoCは必ず必要ですか

A

必須ではありません。PoC(概念実証)は、いきなりすべてを作らず、小さく試してから開発を続けるか判断する工程です。必要な品質やシステム連携の条件を契約前に決めきれない場合は、段階を分ける意味があります。既存サービスのカスタマイズで要件と受け入れ基準を決められる場合は、PoCを独立した工程にしない進め方もあります。

Q

社内にAIの専門家がいなくても発注できますか

A

発注できます。社内に必要なのは、現場の手順や例外を説明する担当者と、完成したシステムを業務で使えるか判断する責任者です。AIの設計や実装を外注しても、この2つは自社で担当します。

Q

AIを使わない開発になることもありますか

A

あります。入力と処理手順、出力を固定できる作業は、通常のシステムや自動化で対応できる場合があります。ただし、判断のばらつきだけで決めるのではなく、例外処理の量や必要な精度も確認して選びます。

開発の型を決める段階から相談する

対象業務は決まっていても、データや連携条件を確認できず、どの型に当てはまるか判断できない場合があります。次のような課題がある段階でも相談できます。

  • 既存サービスのカスタマイズだけで目的を達成できるか判断できない
  • 使用するデータの保存場所や形式を社内で把握していない
  • 内製する工程を決めたいが、自社だけでは機能要件をまとめられない

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監修・執筆者

祖父江 聡士。東京大学大学院修了後、AI SaaS企業のストックマークや東証プライム上場企業のプレイドで新規事業のシステム開発責任者を歴任。独立後はプライム上場企業を含む80社以上のAI導入・業務システム開発を支援し、生成AI・RAG・データ基盤の設計から実装までを得意とする。

参考にした調査・資料