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AI活用事例|業種別の使われ方と、自社の業務に当てはめる方法

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中小企業でのAIの使われ方は、業種を問わず概ね2種類の傾向があることがわかっています。ただ業界ごとのAI活用事例をみても、自社のどの作業に重ねるかまではわかりません。

この記事では、自社で最初に検討する領域を1つに絞るところまでを説明します。読み終えたら、自社の業種で多い使われ方と、それに対応する社内の作業を1つ挙げられるようになります。

要点

この記事の要点

  • 中小企業の使われ方は、文書づくりと定型作業の自動化に集中
  • 止まっている理由の最多は、活用する業務をイメージできないこと。
  • 省力化投資のなかでAI活用まで進んだ中小企業は30.3%
  • 足りないのは事例の件数ではなく、自社業務との接続
  • 候補選びの軸は、繰り返しの回数と、確認できる人がいるかどうか

AI活用事例として語られているもの

同じAI活用事例という言葉に、3つの違うものが混ざっています。社員が個人でAIを使う話、ある部門の業務に組み込む話、全社で使う土台をつくる話です。

AI活用事例と呼ばれるものが、個人の道具・部門の仕組み・全社の基盤という3つの異なる層のどれかを指すことを示した図

AI活用事例として語られている3つの層

起きていること

決める人

始めるのに必要なもの

個人の道具

社員が自分の作業でAIを使う。会社としての決定はない

使う本人

使える環境と、扱ってよい情報の線引き

部門の仕組み

決まった業務にAIを組み込み、人が確認する工程まで決める

部門責任者と経営

対象の作業、確認する人、戻し方

全社の基盤

全社で使う土台をつくり、データの置き場所を整える

経営

予算枠、データの保管場所、社内ルール

3つは順番に上がっていくものではなく、どこから入るかを選ぶものです。ニュースで大きく扱われるのは全社基盤ですが、そこに書かれた期間や体制は、他の2つを検討している会社には当てはまりません。自社が今どの層の話をしているかが決まると、読む事例が絞れます。

個人で使うことと会社として導入することの違いは、AI導入とは?社員が使っても進まない理由で説明しています。

事例を集めても、自社で何をするかが決まらない理由

事例が足りないから決まらないのではありません。集めた事例を自社の業務に結び付けられないことが、多くの会社の詰まりどころになっています。

中小企業庁の2026年版中小企業白書に、AIを業務で活用していない理由を尋ねた集計があります。

AIを業務で活用していない理由

活用していない理由

回答の割合

活用する業務がイメージできていない

63.4%

推進人材の不足

40.0%

社内ルールの未整備

26.2%

セキュリティや情報漏えいへの不安

14.5%

予算を確保できない

13.8%

対象は、2019年以降に省力化投資へ取り組んだ中小企業のうち、AI活用には取り組んでいないと答えた3,888者。複数回答のため合計は100%になりません。確認日は2026年8月24日。

この表からわかることは、AIを活用する上で止まっている理由で大きいものが業務のイメージ不足ということです。これでは事例を調べても状況は変わりません。個別の事例は、その会社の業務と体制のうえに成り立っています。業務が違えば、そのまま持ってこられない。自分の業種でどういう使われ方が多いのかを見るほうが、社内の作業と重ねやすくなります。

中小企業のAI活用は、今どこまで来ているか

省力化投資に取り組んだ中小企業のうち、AIの活用まで進んだのは30.3%です。

業種別のAI活用取り組み割合

業種

回答した事業者数

AI活用に取り組んだ割合

情報通信業

237

71.7%

小売業

296

31.1%

卸売業

1,132

27.9%

運輸業・郵便業

215

27.4%

建設業

1,428

25.9%

製造業

1,508

24.9%

宿泊業・飲食サービス業

48

22.9%

回答は5,645者。AIを導入している企業の割合ではなく、省力化という文脈に限った割合です。宿泊業・飲食サービス業は回答が48者と少なく、順位づけには使えません。

情報通信業だけが突出し、残りは4社に1社前後で並んでいます。ITツールの活用そのものは全体で約7割です。道具は入れたが、AIまでは進んでいない。自社の業種がこの帯に入っているなら、出遅れかどうかを気にする段階ではなく、どこから見るかを決める段階です。

業種別に見る、実際に多い使われ方

中小企業白書に業種別の集計があり、業種が変わっても使われ方の顔ぶれは変わりません。

業種別に多いAIの使われ方

業種

回答した事業者数

最も多かった内容

次に多かった内容

建設業

177

文書の作成、要約、校正 60%

業務の自動化、効率化 38%

製造業

227

業務の自動化、効率化 51%

文書の作成、要約、校正 38%

情報通信業

93

文書の作成、要約、校正 46%

プログラミング支援 45%

運輸業・郵便業

37

業務の自動化、効率化 54%

文書の作成、要約、校正 38%

卸売業

162

文書の作成、要約、校正 49%

業務の自動化、効率化 45%

小売業

50

文書の作成、要約、校正 48%

業務の自動化、効率化 38%

不動産業・物品賃貸業

39

文書の作成、要約、校正 54%

業務の自動化、効率化 36%

学術研究・専門技術サービス業

42

文書の作成、要約、校正 52%

業務の自動化、効率化 36%

自由記述の回答を生成AIでカテゴリに分類した集計です。その業種の何割が使っているかではなく、回答にその内容がどれくらい現れたかを示します。複数回答のため合計は100%にならず、回答数も37者から227者まで開きがあるため、業種同士を比べることはできません。

8業種のうち7業種で、同じ2つが並んでいます。自社の業種に固有の使いどころを探すより、この2つのどちらが社内に多いかを見るほうが早いということです。文書をつくる手作業が多いのか、決まった手順の繰り返しが多いのか。最初に見る領域は、たいていどちらかに入ります。

実際には、どんな仕組みがつくられているのか

表にある文書作成や業務の自動化は、社内では次のような仕組みとして形になります。AIが受け持つのは、人が決める部分ではなく、その手前で情報を集めて形にする部分です。

AIが情報収集・整形・案の作成までを担い、最終的な判断と送信は人が行うという役割分担を示した図

業務領域ごとにAIが担っている工程

業務領域

AIが担っている工程

出てくるもの

広告運用、マーケ支援

各媒体からのデータ取得、集計、レポート整形

定例レポート

会議の多い組織

録画と文字起こしからの生成、管理ツールへの登録

議事録とタスク

コンサル、営業、企画

調査から構成、スライドの生成

提案資料、設計資料、業務フロー図

経理、バックオフィス

見積から請求、入金までの一元管理

請求まわりの管理と資料

カスタマーサポート

問い合わせに対する返信案の作成

返信案。送信前に人が承認する

どの領域にも共通しているのは、AIに任せているのが判断ではないことです。カスタマーサポートの例では、返信案をAIがつくり、送るかどうかは人が決めます。自社の作業に置き換えるときも、決める工程は人に残したまま、その手前の作業だけを切り出す形になります。

自社で最初に試す作業の選び方

候補を絞る基準は3つです。同じ手順で繰り返し起きている作業であること。元になる材料が社内にあること。そして、出てきたものが正しいかどうかに人が気づけることです。

探す先は、時間がかかっている作業になります。白書がAI活用に取り組んだ1,685者に目的を尋ねたところ、業務時間の節減が84.5%で突出し、人件費の削減は24.5%にとどまりました。人を減らすためではなく、今いる人の時間を空けるために使われているということです。

候補になる作業の見分け方

見るところ

候補になる状態

候補から外れる状態

繰り返しの回数

毎週または毎日、同じ手順で起きている

年に数回で、そのつど手順が変わる

材料の有無

元になる資料やデータが社内にある

担当者の頭の中にしかない

確認のしやすさ

出てきたものの間違いに、担当者が気づける

正しいかどうかを誰も判断できない

分かれ目は、確認のしやすさです。人が正しさを判断できない作業は、任せても確認ができません。3つを満たす作業が複数残ったときは、最も件数の多いものを選びます。

AIでやることか、通常の自動化で足りるか

候補が挙がっても、それがAIの出番とは限りません。手順が完全に決まっていて、途中に判断が入らない作業なら、通常の自動化のほうが安く早く終わります。AIが要るのは、文章や画像のように形が毎回違うものを扱う場合と、材料から新しく何かをつくる場合です。CREARIでは、AIではなく通常の自動化で足りると判断した場合は、そのように伝えています。

候補が1つに決まったら、次はどこまでの情報を入力してよいか、誰が結果を確認するか、どうなったら止めるかを決める段階に入ります。この3点は、以下の記事で説明しています。

AI導入とは?社員が使っても進まない理由AI導入とは、AIを買うことではなく、どの仕事をどこまで任せ、誰が結果を確認するかを決めることです。社員が個人で使っていても会社として進まない理由、他社が止まっている場所、候補になる業務の見つけ方、始める前に決める3点を公的調査をもとに整理しました。AI導入記事を読む

自社の業務を洗い出す方法

社内を調べる方法は、手元の材料から始められます。繰り返している作業を書き出し、それぞれに月あたりの件数と、1件あたりのおおよその時間を添える。この2つがわかると、よりAIを活用する社内業務が明確になります。

まとめ|事例は集めるものではなく、自社の位置を測る物差しになる

AI活用事例を何件集めても、自社の答えは出てきません。足りないのは件数ではなく、事例と自社業務のあいだをつなぐものです。中小企業での使われ方は業種を問わず、文書をつくる仕事と、決まった手順の作業の自動化に集まっています。まずは候補になりそうな作業を1つ挙げて、その月あたりの件数を部門に出してもらうところから始められます。

そこで多いのが、領域までは決まったのに、どの作業を切り出せばよいかが社内で決まらない状態です。今のやり方が当たり前になっているため、切り出せる単位が見えにくくなります。

CREARIは、AIシステムの設計と開発から、現状分析、戦略立案、PoC、運用定着までの伴走支援を行っています。年間40社以上のAI導入を支援しており、そのうち半数以上は、対象業務の棚卸しから入る案件です。AIではなく通常の自動化で足りる場合は、そのように伝えています。

挙げた作業をAIで解くべきか、通常の自動化で足りるか

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相談前に書き出しておく4点

  • 対象にしたい作業の名前
  • その作業のおおよその件数と、1件あたりの時間
  • 現在の手順と、扱っている情報の置き場所
  • 社内でまだ決まっていない点

出典